大判例

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高松地方裁判所 昭和25年(行)13号・昭25年(行)14号 判決

原告 森本文次

被告 三本松労働基準監督署長

被告 香川労働者災害補償審査会

一、主  文

原告の請求は何れもこれを棄却する。

訴訟費用は全部原告の負担とする。

二、請求の趣旨

原告訴訟代理人は、(一)、被告三本松労働基準監督署長(爾後監督署長と略称する。)が亡龝山菊次の死亡による労働基準法に基く遺族補償並葬祭料に関し昭和二十四年五月九日原告に対し為した合計弐拾六万六千参百七拾八円支給すべき旨の審査決定はこれを取消す。(二)、被告香川労働者災害補償審査会(爾後審査会と略称する。)が右決定に対する原告の不服申立に対し、同年十一月十五日為した右不服申立を認めない旨の決定は取消す。(三)、訴訟費用は被告等の負担とするとの判決を求めた。

三、事  実

原告訴訟代理人は、その請求の原因として、訴外龝山菊次は、昭和二十四年一月二十一日香川県大川郡福栄村山林に於て、原告所有の薪材原木を以て薪束製作の作業中誤つて転落死亡したが、被告監督署長は菊次を原告の薪製作の業務に従事する労務者と認め、同年五月九日労働基準法第八十五条に基き、原告に対し遺族補償費弐拾五万壱千参百円、葬祭料壱万五千七拾八円合計弐拾六万六千参百七拾八円の災害補償費を支給すべき旨の審査決定を為したが、菊次は原告所有の立木を原料として薪を製作し原木代として薪一束につき五円を原告に支払ふ時は同人に於てその製作した薪を自由に処分し得べき約定の許に、全く同人の事業として作業し居り原告より賃料等の支給も受け居らず、原告の労務者で無い、従つて菊次を原告の労務者なりと認定し、これを前提として為した右監督署長の決定は失当であるから、被告審査会にこれが不服の申立を為したるに、同審査会も同年十一月十五日原決定を正当とし原告の不服申立を認めない旨の決定を為したが、前示理由により、これが決定も失当であるから、茲に右前決定の取消を求める為め、本訴請求に及んだと陳述した。

被告両名訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、答辯として、原告主張事実中、訴外龝山菊次が原告の労務に従事していなかつたとの点を除く爾余の点は全部認めると述べた。

四、理  由

按ずるに、行政訴訟を提起し自己に有利な本案判決を受けるには、その要件の一つとして、行政官庁によつて国民の権利義務に関し法律上の効果を発生させることを目的とする行為が為されることを要し、仮令行政官庁によつて国民に対する行為が為されても、それが国民の権利義務について法律上の効果の発生をきたすことなく、例へば行政庁の好意的注意、勧告、戒告、希望等であるときはそれに対し、行政訴訟を提起し、その当不当を問題にすることが出来ないものである。今これを本件について見るに、原告の主張は訴外菊次が、昭和二十四年一月山林で原告所有の薪材原木を以て薪束製作中誤つて転落死亡したが被告監督署長は菊次を原告の薪製作の業務に従事する労務者と認め、労働基準法第八十五条に基き原告に対し災害補償費を支給すべき旨決定を為し、これに対し原告は不服につき、被告審査会に不服の申立を為したるに同会に於ても原告の不服申立は認められなかつたが、右両決定は失当につき本訴に於て取消を求むと謂うにあるが、右監督署長及審査会の審査決定は何れも災害補償に関する紛争を出来うる限り簡易迅速に解決せしめる為めに認められた一種の勧告的性質を有するもので、国民の権利義務に法律上の効果を及ぼすものでなく、原告はこれによつて法的拘束を受くるもので無く従つてこれが取消を求むる為め、訴訟を提起する必要もなく又その利益も無いから、本訴請求は爾余の判断を俟つまでも無く失当として棄却すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 野田侃四郎 小川豪 水沢武人)

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